──手ごたえがあったのは何年ぐらいたってからですか。

独立して3年目ぐらいのときに、いろんな人から展示会をやってみないかとか、そういう話があって。発表した頃は、ろくろで作るものが多かったけど。

それで、絵を描くけども、なんかこう、別にここにこんなものを描かなくてもいいような絵ってあるじゃないですか。なんでここに花を描くんかなとか、なんでここに鳥がおるんかなとか、そういうのは描きたくなくって。
でも色というのは綺麗だから、立体物に色を塗ってくっていうのから始めて。いろいろ実験しながら、失敗の繰り返しやったね。 ここに「あはは」ってあるけどね、「あはは」シリーズも「うふふ」シリーズも展示会をやって、3、4年経ってからかな。



生活の中で笑いをなくしたら、大変やなって思うし、それで笑いを字で書いてやろうと思って。「あはは」「うふふ」って書いて、個展に出したときに、1年目、誰も見向きもしない。字もね、ちっちゃい字でね、なんか、恥ずかしそうに、自信なさそうに書いててね。やっぱそれじゃ誰も見てくれないんやね。
それからいろいろ書いていくうちに少し元気になってきて、翌年、そればっかり売れた。それで自信になって、「あはは」「うふふ」シリーズっていうのもその頃から。

── 一三さんの作品は、一見使いにくそうに見えて実はとても使いやすいですね。

これも、けったいな取っ手やと思われると思いますけど、使ってみると、意外と手になじむ。ねじったカップにはねじった取っ手って思って、粘土をいじりながら思いついた形をひねって作ってみて、それでできたのがこれ。指に絡まって離れないんですよね。

伝統的なものを受け継ぐっていうのは、まず形から入るし、そのものをコピーしたりするのも大事だけど、それだけやってたら魅力がなくなってしまうと思うんです。伝統っていうものは、自分たちがその時代に生きて、考えて、ちょっとでも変えようっていう試行錯誤がないと、やっている意味がないし、次につながっていかないと思うし。何でも鵜呑みにするんじゃなくて、ほんとにそうかなっていっぺん疑ってみて、こうでもどうかな、こうでもどうかなってやると、意外な答えが見えてくるんやね。
僕ら、究極の形と言われてる工業製品みたいなものを使わされているけど、風変わりなものでも、使っているうちに自分のものになって、使いこなせる。不思議やね。人間の脳って慣れる能力を持ってるし、はじめから決めつけないで、いろんなことを積極的にやってみたらいいんじゃないかって思うんです。

──パソコンでイメージを作り上げて制作するようなことはありますか。

いや、そんなことはしない。頭の悪いぶんは、手で考える(笑)。
大きさにしても何にしても、目で見て手で感じるっていうのが一番やから




Copyrights (C) 2010 NPO法人さろんど九谷 加賀の九谷プロジェクト実行委員会,All Rights Reserved. mail