迫力ある造形。細やかで美しい線、そして、淡く優しい色合いで描かれた、生き生きとした花鳥の上絵。製作途中の作品が所狭しと置いてある伊豆蔵幸治さんの工房にお邪魔した。
──伊豆蔵さんは今の技術をどこで学ばれたんですか。

僕の親父は大樋焼や陶器の陶工で、手びねりとか轆轤とか、焼きものの基本的なことは親父に習ったんです。それから吉田壮八先生のところで4年間、色絵磁器について学んで、その先生の紹介で、日曜日には小松へデッサンも習いに行ってました。

──お父様が焼きものされてて、伊豆蔵さんも小さい頃から焼きものをしようと思われてたんですか。

いや、思ってなかったです。僕は機械工学部出身なんです。でも、親父の背中を見て、粘土で遊んでいたからね。父の手伝いをしているうちに、いつのまにかこの道に入っていきました。

──じゃあ、機械工学の勉強を終えた後で焼きものの世界に。

そうです。毎日、茶陶を学びながら茶碗つくるのは面白かったですよ。

──伊豆蔵さんの作品は、素地だけでも迫力ありますよね。

僕の場合は、仕事としては板づくりの作品が多いんです。板づくりっていうのは、粘土を陶板上にして貼り合わせていくんですけど、貼り合わすのにいろいろ技術がいるんです。いまだに失敗しますし、難しいんです。

九谷焼は分業制ですけど、僕は基本、焼きものっていうのは素地から出発して、自分の個性の素地に、自分スタイルの絵を描くべきだと思ってます。今のような時代はますます、個性としての上絵はもちろん、造詣においても他とは違う素地が必要とされているんです。



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