──作品はスケッチを描いたりするんじゃなくて、頭の中に?

スケッチはする。だって、おっきな壷なんて、後で形変えられないから、ある程度寸法も割り出して、作っていかないと。

──作るときのイメージはどこからわいてくるんですか。

それはいろいろ。昔のものだったり、自然の形だったり。貝とか、石とか、花とかね。
そのものじゃなくても、イメージ。


《焼締割山椒》

──花からイメージっていうのは?

花はやっぱり、形。全体の形とか、花びらそのものもあるし。野菜でもそうだね、曲線とか。ここ、笹百合がいっぱい咲くから、笹百合の形とか。

──こういう花瓶はどういうふうに考えて作るんですか。

これはもともと砧の変形だね。ただこれは比較的、椿を根元にぽっとして、首長くして、合うような感じ。これは椿が高いけど。ちょっと変わった生け方できるんじゃないかな。椿を生けて様になるような。ま、椿じゃなくてもいいんだけど。

──中村さんの作品はちょっとゆがんでたりしますけど、綺麗なマルにしようとは思わないんですか。

綺麗なマルはいっぱいあるから。綺麗なマルって、鋳込みでやれば綺麗になるよね、機械でね。洋食器なんか、それがいい場合があるよね。鋳込みでやると変形もしづらいし。
手びねりで作ってると圧が違うから、厚みとか違ってきたり。そうすると、特にこういう窯は変形しやすい。



──形は昔から、これがいいんだ!使いやすいんだ!っていうのはあるんですか。

昔からっていうか、だんだん変わってくる。使ってみてっていうのはもちろんあるね。
進歩するとは限らないけど、変わってはいく。

──作ってるときはどんなことを考えてらっしゃるんですか。

無念無想。…孤独に耐えて。窯いっぱいにするんで、考えてる余裕ないの(笑)。

──九谷焼がたくさんある中で、土ものされて、どうですか。

仲間はみんな九谷焼だから。まったく抵抗ないよ。取り合わせでね、九谷でも、染付でも合うし。

──あとを継がれる方はいないんですか。

弟子はいたけども、岩手だし。最近、こんな仕事したいって人、少ない。若い人がね。見にも来ないもんね。窯焚き見学には来るけど。我々の世代のときは結構ウロウロしたけど、まったく反応がないっていうか。うちに弟子に来たのも10年以上前だし、それ以降来たことないもんね。

──磁器より土ものが好きな若者がいると思うんですけど。

だけどやるのは圧倒的に磁器じゃないのかな。需要もそうだし。
趣味でやりたい人は結構土ものに行くんだけど。自分でコネコネしたい人は(笑)。

──これからどのような作品を作っていきたいというのはあるんですか。

うーん。(長い沈黙)










絵とかつけないから、展開いろいろ急激にとかは、なかなか難しいよね。
体力もいつまで続くかわかんないし。ま、続く限りは。




《好きな加賀の場所》

うちの向かいの小高い山なんだけど、そのずっと尾根伝いに、10世紀頃の白山信仰の修験道の寺の跡が見つかったの。白山比咩神社の文献に出てるんだよね。那谷寺と栄谷寺と温谷寺って、その3つが白山三カ寺であるっていう。そういう文献に残ってて、それがまあ数年前に確認されて。
そこの上に、白山が遥拝できる場所があって、修験道の基地になってたんだよね。そこから全部白山が見える。

(2011年3月9日)


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