焼物の奥から咲き溢れる花詰技法を九谷焼へ凝らす鈴木朋子さん
四季が凝縮された幻想を描く花詰
花詰(はなづめ)の特色は、百花繚乱を極めた意匠にあります。
そこには四季折々の花が一斉に咲き誇る、夢見心地な幻想郷が現れているようです。
花詰が盛んに描かれるようになったのは明治・大正。
日本の陶磁器が海外へと活発に輸出された時代に
西欧諸国を意識してデザインされたのか
春夏秋冬の和花を詰め込んだ作風が開花しました。
この絢爛豪華な花詰に、新風を吹き込んでいるのが
石川県加賀市の華窯で九谷焼を作陶している鈴木朋子さんです。
百花の王と称される牡丹をはじめとする、多種多様な花を描き
輝かしい金彩を施した伝統意匠に基づきながらも、豊富なバリエーションを展開しています。
優雅な季を運ぶデザイン
春夏秋冬が一度に訪れた、幻想的な花畑を想起させるデミタスカップや酒器。
器の奥から次々と咲き誇るかのような描写には
丁寧な手仕事が、遺憾なく発揮されています。
そこに表現されるのは紋様や柄などの平面的デザインではなく
立体的に咲き、風に揺らめくような「花の絵」であり
花弁や葉先などの輪郭線の勢いが、花詰全体に躍動感を与えています。
その伸びやかな筆致は、古九谷にも通じる優雅さを感じさせます。
千差万別な色絵具から生まれる花詰九谷
花詰は明治・大正期にかけ、九谷焼の絵付師によって盛んに描かれていますが
薩摩や京都においても洗練されたデザインが生み出されています。
花詰技法の最盛期に、日本各地の名匠が手掛けた逸品は現代にも残されています。
優れた作品から花詰技法を独学した鈴木朋子さんは、伝統デザインに基づきながらも
鮮やかなカラーバリエーションを展開することで、比類なき独創性を発揮しています。
様々な鉱物を調合し、濃淡に富んだ絵具を自ら作り
その多彩な絵具を使い分け、コントラストの強い花詰を描いています。
例えば、牡丹を桃色に彩る「マロン」と呼ばれる色は、鈴木さんが重宝している絵具の一種です。
自由闊達な技巧で、多彩さを極める花詰。
手描きの醍醐味の1つに、カーブした表面への絵付けが挙げられます。
凹凸や曲面などの形状に合わせた装飾も、手描きの成せる技であり
香炉や香合、招き猫へと自由自在に絵付けを施せます。
牡丹、紫陽花、朝顔、菊、椿といった春夏秋冬を象徴する和花も
フラワーアレンジメントのように調和されたデザインへと組み合わされていきます。
鈴木朋子さんは、和歌などに詠まれる伝統的な植物をモチーフとする一方
洋花であるバラを題材とするなど、花詰の新領域も拓いています。
和花に限らず、世界各地の植物をモデルにすることで
花詰のデザイン・パターンは、際限なく多様化する可能性を秘めています。
千差万別な咲き方をする花々を、豊富なカラーバリエーションで塗り上げ、
どのような構図で組み合わされるのか、今後の制作に目が離せません。
作風を活かしたオーダーメイド
鈴木朋子さんの作風に満ち溢れた
食器や置物を特注できるサービスです。
絵や形などの制限もございますが
お気軽にご相談ください。