──新開先生も北出不二雄先生も、ペルシャ陶器を参考にされていますよね。その影響は何か受けましたか。

あぁ、受けたよね。やっぱり青が好きになったっていうのもそれかもしれんね。
ただそれよりも、基本的にみんな好きなんやね、青が。
私はこう、青やけど、東山の新開先生のところから帰るときいつも坂で、自転車で降りる。そのときの夕焼けとかね。あの色を出したかったんや。
こう、青空がくらーくなっていく、そんときにあかーく見えてくる、微妙なとこの青。
それが出したくて。もうひたすら。

──目指す色を出そうとしてずっと試験を?

そうそう、こんなもんずっと試験よ。焼きものの世界はほんと化学と一緒。実験以外にはあんまり意味がないんじゃないかな。好きなものを求めて。

──そういう意味では大学の勉強も役に立った。

そうそう、ひたすら耐えるという(笑)。


──出したいと思う色は出せるものですか?

理論的に出てるときもあるし、出ないときもあるし。
一番最初にやってたときはちょっと違うんだけど。失透いうてマット系の釉薬。
それで、まあ微妙な色も出してるし。だから、まあまあ出てるかなとは思うんや。
理論的に言えば、青っていうのはコバルトとか鉄とかで出せる。で、夕焼けの赤って出すのは、基本的に言えば銅で出せる。還元焼成で出せる。
それなら、それをどう組み合わせていけば、それに近い世界が出てくるか。
どのぐらいずつ組み合わせて、粘土はどんな粘土にしたらいいか、それに対して還元焼成を弱くするか、中性にするか、強にするか、そういうことをやっていけば、いつのまにか色見本みたいに出てくる。
まあ、何年かかるか、永遠に出ないか、すぐ出るかっていうのは、もう実験の結果よ。


《遊魚》


──いま苧野ブルーと言われている色は、すぐにできたんですか。

ううん。やっぱりそれなりに考えて。
ただ青を出すだけなら酸化が一番いいわけですよ。で、酸化が一番ある意味簡単なんですよ。要するに、世の中すべて、酸化された世界だから。
還元ていうのは一皮むくってことやから。そうでしょ。要するに裸になることですよ。本来もってる。一番わかりやすいのは、銅がそうやんね。精錬されたときは、銅の赤。それが酸化することによって緑になる。ところが緑出すのは楽なわけ。赤を出すのは、逆に言うと難しいわけよ。生まれたばっかりの状態に保たなければならない。だけど、生まれたばっかりのままではなかなか面白くない。その微妙なところやね。浪漫ですよ。ある意味。


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