(不二雄さんが富本憲吉さんに)初めてあったのは20代後半。美大(現金沢美術工芸大学)に通っていた頃です。
富本さんの印象は強かったみたいですね。ここに(富本憲吉さんが)来られて、作陶風景を見ていて、文様から文様をつくるのは絶対いけないっていうことや、自分でスケッチしたものを文様化するということに父は共鳴していたんです。
スケッチしたものを文様化することが父の作風の主で、スケッチはあらゆる方面のものをやっていました。スケッチしてきたものを簡略化して文様化して、描けるようにする。
慣れていくと、スケッチした時点で構図が面白いと、その時点で文様化していく。
不二雄さんの工房の棚にはたくさんのスケッチブックが |
──不二雄さんが特に好んでいる文様はあるんでしょうか。
花でいえば牡丹ですね。この皿は結局ものすごく簡略化した絵です。牡丹の絵って写生しだすとすごくきついんですよ。
父に聞いたんですが、牡丹というのはおおまかに3つの部分に分かれていると。
その特徴をつかむと牡丹らしくなる。そういう意識で描いているのがあれです。あそこまで簡略化して牡丹にみせるっていうのはね。
数多くスケッチした人にとっては、花びらの形は大体一点から出てるというイメージがある。
本物を見ない人はそれを外しちゃうから、見ててもちょっとおかしな花だな、となっちゃう。
牡丹を簡略した文様が描かれている |
あと何回も描いているのが好きなんかなと予想すると、サギ・蓮が多かったですね。
蓮池があると必ずスケッチしていましたね。
妙高山をスケッチして描いたものもありますね、白山もあるし、現在(2011.2.23)九谷焼窯跡展示館で展示している山の文様が描かれた作品は父に言わせると自分らしくないと言っていましたね。エレベスト辺りの山の写真を使って描いたそうです。よく見るとあんな急な傾斜の山は日本の山にはないんですよね。
──鳥を描いていたお弟子さんに「その鳥は飛ばん」と指摘された話を聞きました。
父には生き物を文様にした絵を見せたらだめなんですよ(笑)。
以前、現代美術展で出す時に急いでいて、こっちがこういう構造でいいですかね?と聞いたのに
「この動物はおかしい。こんなとこ鋭角に描くと裂けてしまう」と細かいこと言われて、結局こっちが聞きたいことが聞けず、やり直しになった(笑)。
生き物の基本っていうのがわかっているから、だからそれを知らない人が描いたのをみると、全く違って見えるのでしょう。
鹿の絵を頼まれた時に、鹿はこれまで奈良にいっていくつも写生したのがあるのに、バンビの本まで買ってきて、また描き出すんですよ。
普通の感覚だと、頼まれたら早くしたいものだけど、自分が納得するまで構図を考える。
絵の具に関しても自分が納得するまで試験していましたね。
どんな色味を求めていたかは知らないけど、五色のピースはいくつもあります。
お母さん(不二雄さんの奥さん)がそれを針でつなぎ合わせていって。そこまで追求する姿勢っていうのは普通の人にはないと思います。
お母さんも言っていましたが、それより作品を作って食いぶちをかせいでくれと(笑)。
納期迫っているのに妥協する事がなく、とことん追求する人です。